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「どうしてりんご飴専門店を作ったんですか?」
この質問は今でも上手く答えることができない。
お店を作った時は夢中すぎてそんなこと考える余裕もなかった。
作りたいというよりは、作らなければいけないという使命感に近い。
今思えば何かに取り憑かれたようだった。何が僕をあそこまで駆り立てたのだろうか。
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りんご飴専門店を作った理由は二つある。
① 自分の作品を作りたい。
② 自分の居場所を作りたい。
僕は田舎から上京して、自分の中に何もない事に気づいた。
あるとすれば軽度の障ガイ由来の個性だけだ。何者かになりたかった。居場所が欲しかった。
(記憶の中で)初めてりんご飴を食べたのが運命の日、2011年の11月だ。
アルプス乙女のりんご飴。プレーンのタイプとミルクキャンディーの二種類。
当時お付き合いしていた彼女がどうしても食べたがった。これが不味かった。
何者かになりたい自分、居場所を探し続ける自分がりんご飴と重なったような気がした。
りんご飴が理解のない悪い奴に捕まって利用され、見せ物にされ、誤解されているように感じた。
俺たちは見せ物じゃない!
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僕は「どうしてりんご飴専門店を作ったんで すか?」と聞かれると
左上の空間をぼーっと 見つめながらこのような事をひとしきり考え、悩みながら
(なるべく変な人だと思われない様 に気をつけた顔つきで)こう答える。
「僕が見つけたんじゃなくて、りんご飴が僕を見つけた。
だから僕が作ったんじゃないんです。りんご飴が僕に作らせたんです。」


2011年11月某日
りんご飴に出会った。
アルプス乙女のりんご飴だった。不味かった。
君たちがそんなにまずい訳がないだろう…。
その時、りんご飴の声が聞こえた(気がする)。
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