

そこら一帯には灰色の山々が空に突き刺さるように連なっている。
露草色の空がビュービューと風の音を鳴らしていた。
麓にある喫茶店(?)に入った。ボロボロだ。ドアを開けると「ガダン!」と鳴った。
メニューは見たことないものばかりで、意味不明だ。仕方がないから店員を呼ぶことにした。
テーブルには火打ち石の様な石が1セットあり、これをカンカンと鳴らして呼ぶようだ。
カンカン、カンカン
何回か鳴らすと奥から仙人のようなおじいさんがお皿に何か乗せてやってきた。
色は白くて、大きさはミニトマト程、木の実のような感じで光の当たり方では半透明にも見えた。
仙人(仮)が食べてみろと勧めるのでひとつ食べてみた。
カリッとして、中からジュワっと何かが溢れてくる。
食べたことあるような無いような…ものすごく美味しかった。
ライチ、マンゴスチン、枇杷、杏仁、アテモヤ…そういう味だった。
あまりにも美味しいのでもっと欲しいというとあまり数がないと言われた。
仙人(仮)曰く、この木の実のような物は【嶺上開花(リンシャンカイホウ)】という果物らしい。
この仙人(仮)、喋るのがすごくゆっくりしていて、何を言ってるのか聞き取るのが難しい。
白く長い髭がたまに口に入ってしまい、モジョモジョと喋りながら口元をよく触っている。
なんとか頑張ってこの嶺上開花という食べ物について聞き取れたことをまとめると、
・限られた僅かな時期にしか採れない。それは秋とか春とか決まった期間ではなく、不定期的。
・ここら一体に聳え立つ険しい山の嶺に白い花が咲く。その花に実るのがこの嶺上開花。
・ガラス製のケースでしか保存ができず、ケースから出すと10分ほどで消えてしまう。
ということだった。これだけ聞き出すのに30分はかかった。
険しい山の頂に白い花が咲いて、そこに実がなる。
消えてしまう?消えてしまうとはどういうことだ?
いろいろ不可解ではあるが、仙人が言うのだからそうなんだろう…。
…、……、………、という夢をみた。
嶺上にひっそりと咲く白い花は風に揺れてコロンコロンと音を鳴らす。
この夢をみてから数年経つが、あの嶺上開花のキラキラした味、香りは今でもはっきりと覚えている。
